2012年12月26日水曜日

『キセキ22 福岡市美術館

今回は”前川建築探訪編”です。
福岡市美術館を訪ねてみました。


福岡市美術館は大濠(おおほり)公園の
美しい環境にとけ込むようにあります。



公園の北側から来館する人は
2階入口から


市街から来館される方は南側の入口から館内へ入ります。

エントランスロビーを抜けて階段を上ると


解放感のある窓から中庭が一望できます。

天井はアーチを描いていて
モダンな照明があります。


エントランスロビーの照明はまるで
福岡県の木「うめ」の模様にみえます。
窓側においてあるイスは1979年(昭和54年)の
開館当初から大切に使われていて
落ち着いた雰囲気をつくっています。

天神山文化プラザの場合、改修工事の後には、
それまで使われてたイスは3脚しか残っていませんが、
こうしてずっと使われているイスをみると
前川建築は外観、内装、周囲の景観が
3拍子そろってこそ完成するのだなと思いました。
前川建築には窓の傍に必ずソファーがあって欲しいと
思ったのは私だけでしょうか?
”ここにずっといたいと思わせる”美術館でした。





2012年12月19日水曜日

『キセキ21』

今回は、天神山文化プラザの外の
前川國男作品を紹介します。

岡山後楽園の外苑
心地よい木々の小道を進んでいくと…


有本芳水(1858~1943)の詩が書かれた石碑があります。


前川國男が設計した詩碑です。

これは実際に採用された粘土模型です。


前川國男氏が設計に至るまでのいきさつを
当時、担当職員の高山雅之さんにお聞きしました。

文芸春秋(昭和32年6月号)の
「壁にむかっての独り言」で
当時の岡山県知事 三木行治が
「いつの日か、県下の春日うららかな丘の上に、
芳水歌碑を建立したいというのが、私の年来の夢である」と
述べたそうです。
これが発端となって昭和35年6月に建立計画がスタート。
岡山県庁を建設中だった前川國男に設計を依頼したそうです。
前川國男は後楽園外苑が最適地であると考えました。
その後も何度か後楽園に足を運び
後楽園外苑の中でも場所を変更をし
設計案を4つもつくりました。


建立当時、有本芳水の碑の前で、くつろぐ㈱大本組の方達です。(池上 傳氏所蔵)

前川國男は、設計書を持参した際、
ここを訪れる人達がお弁当を食べ
憩える場所にしたいと説明していたという。
建立して50年以上過ぎた今も、
桜の咲く頃はお弁当を食べる家族連れでにぎわい
訪れる人達の憩いの場になっています。


















Tenpla gallery ONE

今週のTenpla gallery ONEは、

小林直明さんの洋画で晩夏(牛窓オリーブ園)です。

青々したオリーブの木々から元気をもらえる作品です。
暑い夏が待ち遠しいですね。


今年もあと残りわずかとなりました。
12月23日まで展示しております。
みなさん遊びに来てくださいね。

2012年12月11日火曜日

Tenpla gallery ONE


今週のTenpla gallery ONEは、ろうけつ染めです。


横田節子さんの作品『喜び』です。

素敵な新年を迎えれそうな作品ですね。
来年4/29~5/3 COCOギャラリーで個展をされます。
ぜひ遊びに来てくださいね。





2012年12月7日金曜日

Tenpla gallery ONE


今週のTenpla gallery ONEは、中西孝子さん、版画で『ふわり漂う』です。


色が重なりあって素敵な版画です。
ぜひ遊びに来てくださいね。

2012年12月6日木曜日

『キセキ20』


今回もまだまだ”現役のもの”をご紹介していきます。


手すりは開館当時の原型をとどめています。
レトロモダンな留め金が可愛らしく、
踊り場まで続くカーブが魅力的です。


3階に上る階段。
向かって左側は、コンクリート打ち放しの手すり、
右側はつかみやすい木製の手すりです。
外階段との統一感もあり、ロビーの開放感も高める
優れたデザインで、階段の上り下りもスムーズです。


この階段の3階部分は、
バルコニーを思わせる踊り場になっています。
ここからは行き交う人達や、窓からの景色が見渡せ、
開放感を感じさせてくれます。
  

1階ホワイエの天井にある空調の吹き出し口は
最近見かけなくなった”アネモスタット”です。
通称アネモと呼ばれ、空調の暖気や冷気が、
室内の空気とよく混合されるという特徴があります。

古い建物は壊され、新しい建物が建設される事が多い中、
総合文化センターは、建物の良さは残しつつも、
きれいにしたとあえてわかるような改修がなされ
天神山文化プラザとして、懐かしさと新しさが共存する建物に生まれ変わっています。








2012年11月22日木曜日

『キセキ19』


今回は、開館当時から使用されている照明をご紹介したいと思います。


ガラス製の照明があります。
改修前には3階廊下や外のコンクリートの
柱や廊下に多数取り付けられたものです。
今では残っているのは2つだけ。
                                             
                                             
                  こちらは、1階ホール前自動ドアの上に
埋め込んである照明です。
                        とてもアンティークなデザインが素敵です。               


改めてホールのイスに座って天井の客電を見上げると、
なんとも懐かしい、心落ち着く気分になります。
演劇には向いているホールです。


 今でも現役! ホールの天井の埋め込み式の照明が
舞台を照らします。  

照明のほとんどが改修時に
時代にあったものに変えられる中
50年たった今でも使われている照明が
あったとは驚きです。
前川建築の中には前川國男自身が設計した照明があるそうです。
今回紹介した照明は前川の設計なのか?
ぜひ調査してみたいと思います。









Tenpla gallery ONE


今週のTenpla gallery ONEは永岡かずみさんで
テラコッタによる彫刻作品『夢にからまる』です。
気持ちよくねむっている女性がなんんとも可愛いですね。

 
永岡さんは、天プラ50th記念展「美へのまなざし・交差する世界」、
「アートの今岡山2009」展出品作家です。
開催中の「アートの今・岡山2012風景を越えて」と
合わせてご覧いただけます。
      
永岡さんは次の展覧会でも展示されます。
ぜひ遊びにいってみてくださいね。

異色系女子展 10/23(火)~12/2(日) イタリア料理 piatto nono(勝田郡勝央町)
永岡かずみ展 11/29(木)~12/6(木) アトリエ倫加 (高知市)


2012年11月10日土曜日

『キセキ18』

今回は天神山文化プラザの”窓”に注目していきたいと思います。
 

まずは、コルビュジェが提唱する5大要素のひとつ
南側の水平連続窓です。
夏の強烈な太陽光を遮るために、深い水平の庇が設けられ
日照調整にルーバーが使われています。
建築デザインにルーバーを取り入れたものを
「プリーズソレイユ(フランス語で(太陽を砕く)という意味)」といいます。


反対側の北側はこんな感じ。
2階第3・第4展示室は、
改修前は図書館の閲覧室として使われていました。

大きな窓から、外の景色も見られて
試験勉強の合間の息抜きもできる人気の閲覧室でした。


1階喫茶コーナーの窓からは、
天神岩や紅葉している木々を見ることができます。


個人的には、2階ロビー入口の上にある
大きな窓からの景色が好きです。
3階階段から降りる時、夕焼けの美しさにはっとすることがあります。
振り返ると…レリーフがばっちり見えます。


コンクリート打ち放しの建物は暗いというイメージを
もたれやすいのですが、沢山の照明や屋上からのトップライト
窓から見える景色など様々な工夫がなされ
来館者を和ませてくれます。

 
                      








2012年11月8日木曜日

Tenpla garally ONE


今週のTenpla gallery ONEは、小林明日香さんです。




写真では、お伝えできないのが悲しいですが、とてもきれいです。

企画展「アートの今・岡山2012こえて」の出品作家で
小林明日香さんの絵画「胞子」です。

天神山文化プラザでの開催間近です!!
3館を巡回しますので、ぜひお越しください。

11月21日(水)~12月2日(日)天神山文化プラザ

12月8日(土)~12月24日(月) 高梁市歴史美術館
1月6日(日)~2月11日(月) 奈義町現代美術館

2012年10月31日水曜日

『キセキ17』


平成16年の総合文化センター改修工事に携わった
㈱前川建築設計事務所に            
”特製クリンカータイル”についてお話を聞きました。


質問  天神山文化プラザ、ピロティの床タイルの
特徴を教えてください。    

 答え   角を丸く仕上げている点と
                   織目が美しい、綱代張り(あじろばり)
                 という並べ方をしていること
         3種類の色使いが特徴です。




            質問  同年代でクリンカータイルを使用している
        建物を教えてください。


東京文化会館屋上↑(前川建築事務所所蔵)
弘前市民会館↓(前川建築事務所所蔵)


 
     
    答え  東京文化会館の屋上や、弘前市民会館のピロティなどに
同種のタイルが使われています。  

        天神山文化プラザと同じ、             
       9.5cm×19.5cmのタイルを綱代張りにしてあり、  
       文化センターのスタイルは、その後の前川建築の  
       模範になっているのではないかと推測されます。  


質問  当時のエピソードはありますか?     

   答え  他の建物についてですが、            
                 なぜタイルを使用したか大先輩に聞いたところ、      
 本来、自然石を使いたかったのですが、
       高価すぎて使えなかったのだという話を聞きました。

             タイルは難しい形状を特注しても安かったため多用され、
       建物に合った床にするため、大きさ、色、張り方など
色々検討して決めていったそうです。

         現在では、 石を薄く切る技術が進歩し、人件費のかかる
              特注タイルはかえって高価になってしまったとか…。

                平成16年の改修工事では、似たタイルを探してきて、
                職人さんに角を丸く削ってもらった箇所がありました。



タイルを製造した㈱三石耐火煉瓦の方によると      
当時のタイル製造は、てっぽう窯で1週間焼くという
手間のかかるものだったそうです。                
作業員の方は窯出し後も手足がしびれるなど        
大変な思いをしたそうです。                      

当時の技術を駆使し、建物に合ったタイルに      
仕上げていったことなどを知り、       
プロフェッショナルと情熱を感じ心がふるえました。
じーん。




2012年10月25日木曜日

Tenpla gallery ONE

今週のTenpla gallery ONEは、流木アートで活躍する美術家 岡部 玄さんです。


流木アートで『TURTLE ISLANDO』です。
生と死をテーマとしたインパクトのある作品です。
上にのっているのは、実物の海亀の頭蓋骨です。

岡部 玄さんは、現在芸術回廊に出品する巨大流木作品を岡山城で制作中です。

2012年10月16日火曜日

「キセキ16」

今回はピロティの床のお話です。
ピロティの床は、アスファルト防水の上に
炻器(せっき)質タイル(粘土を高温で焼いて作ったタイル)が敷きつめられています。

(前川建築設計事務所所蔵)

(前川建築設計事務所所蔵)

設計書には『特製クリンカータイル』と書かれていました。
ひとつずつ手作業でタイルを敷くのは、
気が遠くなる大変な作業だったでしょうね。


クリンカータイルは、耐久性に富んでおり、
セメントの製造過程でできるクリンカー(焼塊)が
混入された、素朴な味わいのある厚手タイルです。


近くでみるとタイルはこんな感じです。
雨で濡れても滑りにくいように、表面はざらざらしていて
比較的吸水性に優れています。

大きさは、たて9.5cm横19.5cm高さは1,5cmです。

岡山県備前市の三石耐火煉瓦㈱で特別に作られたそうですが、
なぜ特製なのか?
調査結果は次回のブログでお知らせしますのでお楽しみに!




Tenpla gallery ONE

                 今週のTenpla gallery ONEは、


角南育代さんで、絵画「本の国へ行こう」です。

角南さんのつくりだすなんとも可愛い不思議な世界へ
お出かけしてみては、いかがですか。

2012年10月11日木曜日

Tenpla gallery ONE


今週のTenpla gallery ONEは


                   古山コスミさんで「5月10日の光景」です。

平成17年から写真をはじめられ積極的に活動されています。
11月13日(火)~18日(日)天神山文化プラザ第3展示室にて
100人100色展の時に展示されます。





2012年10月3日水曜日

「キセキ15」

石階段を昇ると、模様のような切れ込みありますが、
みなさんお気付きですか?


この切れ込みは、
右側の切れ込みが上に向いてる方は昇りを、
左側の、下に向いてるのは下りを意味しているそうです。        


屋上の手すりには、ルーバーと同じ位置に
切れ込みがあります。


              
階段の切れ込みの影がピロティの床にできて、芸術的ですね。
                  
                                         前川建築設計事務所提供

柱を作る時と同じように杉板を並べてコンクリートを
流しこんでスリット部分が作られています。

切れ込みだけでなく、ルシオ・フォンタナ(1899~1968)イタリアの彫刻家の作品を模した
空調の吹き出しを作ったり、色に拘ったりと
天神山文化プラザの壁は
遊び心満載です。



Tenpla gallery ONE

今週の「Tenpla gallery ONE」は


写真で ソン・ミユ 「WISH」です。
海辺を歩く彼女にメッセージを送った一枚です。
今回は写真のモデルに登場してもらいました。

2012年9月20日木曜日

『キセキ14』

今回は天神山文化プラザの照明についてご紹介します。

満天の星空に見える2階ロビーの照明と
トップライトからの自然光のハーモニー。



夜間ホールの使用がある時に点けるピロティの照明は
開館当時からあり現在も使用しています。
昭和37年の新聞には、ピロティの天井はコバルト色の天井と
ありますが、現在は黄色になっています。


総合文化センターの夜景です。
ライトアップされて建物がモダンにみえます。
  (S37撮影 池上 傳)

解りづらいかもしれませんが、3階廊下の写真です。
                     (S37撮影 池上 傳 )

平成17年改修時に、あえなく変えられた照明も。
搬入の妨げになる廊下のモダンなライトは,
現在のような天井埋め込みの照明に変わりました。

現在の3階廊下

1960年代に建てられた東京文化会館や総合文化センターには
天井を天の川や満天の星空にみせるなど、設計者の拘りがみえます。
林原美術館など同じ時代に建築された前川建築で
共通点を見つけられたら楽しいですね。
建物と同じように照明にも関心をもって見ていこうと思いました。