2013年6月28日金曜日

『キセキ45』 前川國男邸 後編

今回も引き続き、前川國男邸のお話です。


前川國男邸は、昭和17年に品川区大崎に建てられた住宅です。
戦時中建築資材の入手困難な時期に竣工しています。


この住宅は結婚を機に建てられたそうですが、
1945年に銀座の事務所が空襲により焼失後
ここを事務所として使われた時期もありました。



1954年新宿にMIDビル完成。(2011年撮影)




外観は、切妻屋根の和風になっています。
屋根の瓦には雪どめがついています。



サロンの階段は、
昇降しやすい側桁階段です。
ケコミが抜かれていて、開放感があります。




ダイニングテーブルセットは、水之江忠臣氏のデザインによるものです。
今でも天童木工のベストセラー商品です。
テーブルに上の照明も素敵です。




今回、前川國男邸を、どうしても見ておきたい建物に選んだのは
以前、訪れた熊本県立美術館の井上学芸員の方から
『一番好きな前川作品は、前川國男の自邸で
床面積30坪制限を守っているのに、
大きな建物です。これを見て自宅を
建てようと思ったくらいです』と
お手紙を頂いたことが、きっかけでした。

私も、家のリビングを吹き抜けにできたら…
そんな考えが浮かぶほど
前川國男邸は、とても居心地のよい空間でした。
この江戸東京たてもの園は、とても気持ちよい
人々が憩える素晴らしいところでした。
みなさんもぜひ遊びに行ってくださいね。



次回は、『どうしても見ておきたい前川建築作品第2弾』
埼玉県立歴史と民俗の博物館のお話です。
お楽しみに!!








『キセキ44』 前川國男邸前編

今回は、『どうしても見ておきたい前川建築』第1弾として
都立東京小金井公園の中にある江戸東京たてもの園に展示されている
前川國男邸を訪ねました。

とても緑が気持ちよい公園を歩いていくと…
江戸東京たてもの園があります。



展示エリアを歩いていくと、前川國男邸の
庭先が見えてきます。



北側の入口はこんな感じ。
たがい違いの弊が奥行き感を出しています。
見えにくいですが、右側の壁に表札もあります。


玄関に向かう道この奥に玄関があります。
家に入るまでの喜びを感じられる長さです。

内部は、吹き抜けの居間を中心に書斎・寝室を
配したシンプルな間取りで、
リビングは天井高いつくりになっています。
14.8尺4.48mです。
フローリング材はブナの木です。



天井にはイサム・ノグチの照明が配されています。
この照明は今も販売されているそうです。



台所には窓があり外の景色を見ながら
料理ができるようになっています。
レトロなガス台も素敵です。



初めから洋式水洗トイレだったそうです。
少し便座が現代より低く感じます。
タイル張りでお掃除しやすそうです。

次回は後編おたのしみに!!

2013年6月20日木曜日

『キセキ43』ホール

今回は、演劇や各種発表会の会場として人気があるホールのお話です。



昭和42年3月13日、平櫛田中先生の特別記念講演会の時の写真です。
設計書によると舞台の床材は
杉板の上に桧を貼っています。
(総合文化センター所蔵)


緞帳の老朽化のため開館から10年を経て
昭和48年3月17日に緞帳の
新調披露が行なわれました。
写真上に見える丸い出っ張りは現在もある照明です。
(総合文化センター所蔵)



舞台の床はベニア合板張りに張り替えられています。
客席の壁はコンクリートの打ち放しです。
(総合文化センター所蔵)




こちらの写真は御利用者の吉田祐子さんからお借りした写真です。


昭和51年8月6日ホールでおこなわれた
ピアノ発表会での写真です。
壁はコンクリートの打ち放しのようです。


よく見ると当時の舞台前の床板は
正方形をしています。
奥は細い板が横向きに張られ
素材はブナの板張りにされたという記録があります。


現在のホールとくらべてみましょう!!

この写真は、吉田さんのお子さん
ぶっき~おっぴ~めいちゃんが
2011年天プラ文化祭に出演した時の写真です。



舞台のかたちは総合文化センター時代と
変ってませんね。
床板は全面横向きに張られていて
コンクリート打ち放しだった壁は
平成17年の改修に伴い白く塗られています。




しぼり緞帳も巻上げ式の緞帳になりました。
デザインは彫刻家蛭田二郎氏によるものです。

デザインに込められた意味を伺ってみました。

縦の3本線は、岡山の3大河川(旭川・高梁川・吉井川)の象徴で、
横の帯は美術、書道、音楽…色々な文化・芸術を表しています。

両脇の隙間は、これからの文化・芸術の発展の余地や
可能性をあらわしています。

様々な色彩は文化・芸術の多様性など
全体の赤の色彩は晴れの国岡山がもっている
熱気や心意気をあらわしています。

横の帯の上にあるものは、岡山から日本、岡山から世界に
出ている人・モノの象徴をあらわしているとのお話でした。

保管されていた総合文化センターニュースを読み返してみると
床の張替えや緞帳の新調などの
補修を繰り返して、少しでも居心地のよい
ホールとなるように努力されていたのが伺えます。
建物同様、50年以上たった今でも愛されるホールに
とても愛着を感じました。








2013年6月14日金曜日

『キセキ42』

今回は、ピロティの吹き抜けレリーフの作家である
彫刻家 山縣壽夫氏の作品を訪ねて
井原市にあるポケットパークにきました。

この作品名は『樹』いつきです。1996年(平成8年)
(ブロンズ183×68×56)
この作品の制作意図は、「樹が強く、静かに与えてくれる輪廻、
新生といった”時”のメッセージを表現した」とあります。

山縣先生は、1993年(平成5年)第16回平櫛田中賞受賞された後
この作品を制作されています。



天神山文化プラザ2階情報センターには、
武蔵野美術大学教授退任記念
山縣壽夫展の図録がありますので
ぜひ見に来てくださいね。


50周年記念誌が出来上がりました。

山縣先生の前川氏との出会いや
レリーフ誕生から制作までの秘話など
興味ある話が満載です。


山田孝延岡山県立大学名誉教授の
天神山文化プラザ開館50周年記念式典
基調講演「前川國男の岡山へのおくりもの」が
写真つきで詳しく掲載されています。

総合文化センターから天神山文化プラザの50年の軌跡が
満載のこの記念誌は2階情報センターにて発売中です。
定価500円です。