2016年12月9日金曜日

50のキセキ+16 岡山県立美術館

天神山文化プラザに歩きで来る方は
おなじみのこの道は、実は県立美術館の敷地なのです。
この坂をあがると、、、


天神山文化プラザへの続く道には、岡山県庁跡という石碑があります。
天神山文化プラザ(旧総合文化センター)が
建つ前は岡山県庁でした。


この碑は、岡山県立美術館を設計した岡田新一氏によるものです。

写真左側にあります花壇を高い位置からみると
三つの花壇に見える石のアーチは、
岡山県立美術館ができる前にあった警察署の
建物の一部がここにあります。



㈱岡田新一設計事務所の代表取締役社長の津嶋様にお聞きしましたところ、
元県庁、元警察署という行政の中心であった場所に
文化の中心を持ってくるというコンセプトにおいて、
万成石でつくられたアーチや柱頭は、その場所の
記憶残しておく重要な都市の要素と
建築家岡田新一氏は考えていたそうです。

前川先生が、設計された天神山文化プラザとの
関連も設計設計当初より岡田氏がもっとも気に掛けていたそうです。
天神山そのものが、かつて瀬戸内海に突き出た岩礁のひとつであり
岡山にとってシンボリックな地勢に他ならず
そこにある天神山文化プラザの存在を
どのように都市として継承すればよいか頭を悩ませたそうです。
岡山県立美術館のボリュームが大きいだけに、
前川先生の作品の前に立ちはだかってしまうのは
避けがたく(地盤は硬い岩盤で、地下2階以上深くはできなかった)



なんとかボリュームを消し去ることはできないか思案した結果が
ラスタータイルと唐三彩緑釉タイルの壁面でした。
ちょうど天神山文化プラザとの境界沿いに郡生していた
竹の景色と相まって空に連続する
都市の背景を創るデザインになったそうです。

岡山県立美術館の冊の美術館の紹介では
金属皮膜で塗装されたこのタイルは、玉虫色のように
光や見る角度によって色調が
微妙に変化するとあります。


中庭に、無駄のない重厚な外観とは一味違う
デザインの石柱が置かれている。
これは旧東警察署から移された柱頭装飾であり、
ぐるりを覆う細やかな文様を確認できるとあります。
とても細かい彫刻をされた素敵な石柱ですね。



芸術を人々と、文化を社会と繋いできた
岡山県立美術館が昨年度には日本建築家協会の
25年賞を受賞したそうです。
建築家である岡田新一氏が逝去されても
今なお彼の設計した多くの建築物は
世界中いたるところで佇み、この先も
永く在り続けるに違いない。と書かれています。

私も今回、この普段使っている道や
2階の情報センターから見ている岡山県立美術館が
こんなにも建築家岡田新一氏の思いが
込められていることを知りとても感動しました。
県展のときにだけに開く天神山文化プラザと県立美術館とをつなぐ扉も
設計者の気持ちが込められたものなのかもしれないと思いつつ
いつの日かこの扉がいつでも通れて
人々が行き交うときがくればいいのにと思いました。

岡田氏が設計した岡山県立美術館とオリエント美術館を
ぜひ探訪してみたいという気持ちがでてきました。















2016年12月6日火曜日

50のキセキ+15 ホール

天神山文化プラザのホールは、270席のこじんまりした貸ホールです。
一年を通して演劇やベリーダンス、ピアノの発表会、
時にはマジックショーなど色々な催しが開催されています。

12月2日(金)に岡山県文化連盟の主催企画で
平成28年度岡山県文化のつどい
「青木研岡山でスウィングする」という
4弦バンジョーの世界をお届けしました。



はじめて聞くバンジョーに場内大興奮でした。
舞台いっぱいに演奏者の皆さんがかなでるジャズは
とても素晴らしかったですね。


青木研さんはホールの響きが良いのでと
バンジョーを片手にマイクなしで
客席まで降りてきて、そばでバンジョーを弾いてくださいました。


響きが良いと青木さんの感想に
私は小さくガッツポーズをしました。

前川國男氏も東京文化会館のホールを設計して、
次にこのホールを手掛けています。
この素晴らしい音をぜひ皆さんお聞きくださいね。















2016年11月18日金曜日

50のキセキ+14 建築探訪

今日、世界遺産を日本で支えた建築家前川國男・岡山に近代建築を創るという
見学会&講演会があり、天神山文化プラザにも40名の見学者がこられました。
なんと京都工芸繊維大学の松隈 洋教授が案内してくださいました。
松隈教授は20年も㈱前川建築設計事務所にいたそうです。

まずはピロティにきてレリーフを紹介されました。




第3展示室の中二階から展示室全体を眺める見学者の皆さま。
国立西洋美術館の狭い階段に似ていると言われてましした。


非公開の屋上庭園にみなさん思い思いにベンチに座ったり
レリーフを上からのぞき込んだりしています。



山田先生や前川事務所の方もとびいりで
ご説明をしてくださいました。




スロープを歩いて建物の西側をみます。
西側から見る建物の角は直角ではなく
角がカットされています。
人々を招きいれるようなかたちになっているそうです。

今回の見学者は遠くは埼玉から来てくださったとか。
もちろん岡山市内にお住まいの方も
こんなに近所にコルビュジェの弟子の
前川國男が設計した建物が見ることができて
驚かれていました。またぜひお越しください。












2016年11月2日水曜日

50キセキ+13 弘前市斎場

弘前市の西側、禅寺の並ぶ禅林街を抜け坂を下ると
岩木山を望むリンゴ畑の中に斎場はあります。





弘前市にある前川建築8棟のうち最後の作品となっています。


前川建築とは異なり、屋根は急勾配の鋼板葺になっています。


車寄せの天井は鉄筋コンクリートの
組格子となっているのが特徴です。
雪の日でも十分な広さで訪れる人々を包み込むように迎えます。


斎場内のロビーの様子です。
内部は、炉前ホール、収骨室、事務室などの火葬棟と
待合棟、そしてこれらを繋ぐ渡り廊下で構成されます。


遺族が待つ和室と炉室を繋ぐ、長い緩やかなスロープの渡り廊下は、
黄泉の国と俗世を結ぶ、古事記由来の
黄泉平坂(よみひらさか)をイメージしているそうです。


弘前緑の相談所でも使われていた陶器のベンチや灰皿があります。



優しい光の照明です。


モダニズム建築を日本に広めた前川は
長年フットルーフに拘り続けていたが、
一方で伝統的な勾屋根を取り入れ
流れるような空間構成を
生み出すことに成功している。

前川の母方の古里である弘前に、初めて前川が設計した
処女作「木村産業研究所」から約半世紀、夫人と共に
出席した斎場の竣工式は、前川にとって弘前訪問の
最期となった。3年後の1986年前川は死去。


























50キセキ+12 弘前市緑の相談所

弘前公園東側入口近くに1980年に竣工した
弘前市緑の相談所はあります。
1春には桜や秋には紅葉に包まれ名前にふさわしい
環境に佇んでいます。
桜の木を一本も切らずに設計されました。



中庭には日本一幹の太いソメイヨシノが観光スポットになっています。


正面からは勾配屋根なのですが、、、、


後ろから見ると四角い建物にみえます。

近代建築をリードしてきた前川氏は、1980年代頃より
勾配屋根で建物を覆い始めた背景には、
雨の多い日本にとって勾配屋根で雨を処理する自然さ
いわば風土・環境になじむ建築への素直な思いがあったそうです。


テラスに置かれた陶器のイスです。

テラスに置かれた陶器でできている灰皿です。



大きな庇を支える柱も柔らかい木の端縦模様状の
コンクリート研り仕上げです。


ロビーは網代張り2色タイルです。
このイスも床のタイルとマッチしていて素敵です。

前川デザインの陶器のイス・灰皿なども前川建築の
空間を醸し出す大切な要素であり、
これらが、活きずく緑の相談所は小規模ながらも
前川建築の傑作のひとつであります。

とても素敵な場所にあり現代風な感じのする前川建築でした。
陶器で作られたベンチや灰皿はとてもまわりとマッチしていて
とてもいい感じに配されていました。
中庭のベンチでゆっくり鑑賞したいですね。










2016年10月30日日曜日

50のキセキ+11 

今日、近畿大学建築学部の学生の皆さまが見学にこられました。


2階、3展ロビーの壁の切り込みの模型を熱心に見る学生。


屋上まであるレリーフの一番上の部分に一同大歓声。



天神山文化プラザのシンボルのレリーフ前にて記念撮影をしました。
随所に遊び心と前川國男の建築思想を
感じていただけたことと思います。

これを機会に前川國男の建物について少しでも
興味を持っていただけたら嬉しいです。
ぜひまた遊びに来てくださいね。










    

2016年10月16日日曜日

50のキセキ+10弘前市民会館

階段をのぼると!!


うおおおおと歓声をあげてしまいました。
2階ホワイエの照明です。
この素晴らしいシャンデリアは、銅館を使って作製されています。
平成26年度照明普及賞を受賞しています。
シャンデリアが映えるホワイエを人と人をつなぐ
心地よい空間となっています。

ホールのドアのとってです。
津軽塗がとても伝統工芸のさかんな弘前ならではです。
にっこりして、ここが一番好きと言われてた方の
素敵な笑顔が忘れられません。



ホールの中にはいると木製のイスです。




改修工事の計画にあたり、市と市民の協力で
忠実に復元された棟方志功の緞帳
「御鷹揚げの妃々達々」(おんたかあげのひひたちたち)
実際の緞帳はものすごく大きく
とても見事なものでした。

「このネプタの色、これこそ絶対まじりけのない
私の色彩でもあります」と棟方はいう。
津軽の凧の絵とネプタの風土に育まれた棟方志功の
色彩感覚について建築家前川國男は共感してやまなかった。
思えば前川の色彩感覚も独特なものである。
市民会館のロビー天井の「群青色は日本の夜明けの色」
「赤は人を高揚させる色」と好んで使い続けた。
前川カラーといわれるこうした色彩感覚にもまた
前川に流れる津軽の風土が見え隠れする。
白一色に染まる冬の情景のなか、力強く荒々しい
コンクリート材の素朴な外観に包まれて
内には、前川と棟方が織りなす津軽の色彩が
あふれる市民会館は弘前の風土がはぐくんだ建築なのです。

弘前市民会館大規模改修事業概要 継承と革新より

弘前市民会館は、改修前と改修後での音の響きなど
とてもデリケートな部分でも神経を使われたと
㈱前川建築設計事務所の所長のお話しでもありました。

緞帳のように、これからもずっと弘前市民に愛され
大切に心の中にいる市民会館だと思いました。



















2016年10月13日木曜日

50のキセキ+9弘前市民会館

弘前市民会館は、1964年竣工。
弘前公園の南の一角にあります。
一見シンプルなコンクリート打ち放しは
県産材のヒバの型枠を使っているので
劇場建築をドラマチックに演出。
音楽や演劇、市民の発表の場として
愛されています。


        

近くでみると大きな打ち放しコンクリートの
塊が目に飛び込んできます。
2013年に舞台裏の大キャンバスが復元されました。


        



夕方、振り向くと照明のあかりがもれていて
圧巻の美しさです。


これが弘前市民会館のコンクリートの壁です。
初めてみる粗々しいバラ板木目枠の表情を持つ
コンクリート打ち放し仕上げ壁です。


館内に入って吹き抜けの天井を見あげると、
弘前出身の日本を代表する洋画家佐野ぬい氏の
ステンドグラス「靑の時間」が設置されます。
幅6.0m高さ3.5mの大きなものです。
開館50周年記念事業として制作されました。



管理棟の天井は星空のような照明です。


このカラフルなイスが配されています。
タイルも,とてもいい感じです。



 1階正面奥のおにぎり型の天井ライトみつけました。
なんだか優しいライトです。
空間明るさ向上のため、新設されました。



この階段のぼると…次回お楽しみに!!